愛犬との最期の思い出旅行

10数年前自宅を購入したのを機に家族で相談して、犬を飼いはじめることにしました。それまで私は子供の時に犬に追いかけられたトラウマから犬には苦手意識がありましたが、田舎でしたので庭も広く、室内でも飼える広さがあったため、渋々でしたが了承しました。犬を探すためペットショップを訪れると、そこに売れ残ってやや大きく成長したバーニーズマウンテンドックがいました。店員さんに聞くと生まれてから5か月程経つようですが、バーニーズの特徴である鼻筋の白い部分が細く、途中で切れているため、他の犬は売れたのに、この犬だけ売れ残ってしまったとのこと。

家族でかわいそうだねということになり、そのバーニーズを購入することとなりました。その時は恥ずかしながらバーニーズという犬種を知らず「体は細いのに手が大きいね」などとのん気に言っていましたが、みるみる成長し、あっという間に50キロ近くまで成長しました。「バーニーズは人懐っこい」とは動物病院で聞いていましたが、本当に人懐こくて、仕事をしていたり、用事をしていると隣でおとなしくずーっと見守ってくれる我が家の中心的存在となっていきました。唯一の欠点は散歩嫌い。本当に散歩嫌いで玄関から出ようとすると寝そべったり、手脚で抑えて動こうとしないくらい散歩が嫌いで、強引に散歩に連れて行っても、イヤイヤをして困っている姿をしているとすれ違う人にクスっと笑われるほどでした。

私にとっては家族よりも家族のような存在となって、12年の歳月が経ちました。年は取っていましたが、まだ元気でしたが、背中にしこりがあり、急いで病院で診てもらいました。すると病理検査の結果、ガンで早く取った方がいいということで遠方の大きな動物病院で手術をしてもらいました。しかし既にいろんなところに転移し、あと「もって数か月です」と言われた時には絶望感に苛まれました。日に日に歩けなくなり、寝そべって移動させるにも大人二人がかりの大仕事になっていき、最後の思い出に家族で旅行に行こうと長野県のロッジを2日間借りることにしました。

その時にはもう自力ではほとんど歩くことがなくなっていましたが、ワンボックスカーのシートをフラットにして一緒にロッジへと向かいました。ロッジは湖の湖畔にあり、散歩にはもってこいのロケーションでしたが、車から降ろすのも一苦労でロッジに抱えて入るのがやっと。もう一緒に散歩することもできないのかなと思いながら、その日は一緒に寝ました。次の日起きてみると、隣で寝ていた犬がいなくなっていて心配して探すと、ロッジの玄関の方へヨロヨロと歩いていました。

私は外の景色を自分の力で見てみたいのかなと思い、一緒にロッジを出て、ゆっくり湖の方に歩いていきました。今まで12年間つらい時も楽しい時も共に過ごしてきた思い出が溢れ、涙が止まらない忘れられない散歩となりました。旅行から帰った2日後、家族に見守られながら、最後は大きく息をして亡くなりました。私にとって最後に一緒にみんなと過ごせた旅行の思い出と一緒に歩いた最後の散歩は今も忘れられない旅行となりました。

愛犬との最期の思い出旅行
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